高齢者介護において「転倒」は、誰もが直面する可能性があります。
転倒は骨折や頭部外傷など深刻な怪我につながるだけでなく、介護を受ける方の自信を失わせ、生活の質を大きく損なう原因にもなります。
そこで、適切な対応・予防策を取り、そのリスクを大幅に軽減することが可能です。
本記事では、転倒が起きた場合の迅速な対処法と転倒予防の具体的な方法を、図を交えながらわかりやすく解説します。ぜひ、日々の介護に役立ててください。
- 転倒予防
- 転倒した時の対処法
目次
なぜ高齢になると転倒しやすいのか
ではなぜ高齢になると転倒しやすくなるのでしょうか。
- 筋肉量が減る(身体機能の低下)
- 視野が狭くなる
- 運動不足になりがち
- バランス感覚が低下する
- 反射的な動作が低下する
などが考えられます。
どういった時に転倒しやすいのか
どういった時に転倒しやすいのかだけでも知っておくことで、転倒の予防になります。
- 起床後(覚醒状態が悪い、体の動きが悪い)
- 体調が悪い
- 長時間横になった後
- 立ち上がるとき
- 座るとき
などが、転倒しやすい場面です。
高齢者が1日寝ていると、約1~3%、週で10~15%の筋肉量が低下すると言われています。ですから、起きたばかりの時は特に転倒しやすい状況となっています。
私も起きたばかりはつまずいたりします(;^ω^)
また、立ち上がったり、座るときなどの屈伸動作をする時に、バランス感覚低下や立ち眩み等によって転倒するリスクもあります。
転倒した時のリスク
転倒した時のリスクには以下が考えられます。
- 頭部強打(脳卒中の原因となる)
- 外傷による出血
- 骨折
- 打撲や内出血
特に、頭部の強打は命にかかわりますから、その後の対応が非常に大事となります。
また付随したリスクとして、意欲低下があります。
転んだ記憶は結構残ります。「転んだ=自分の予想以上に体が弱っている」と感じショックを受ける高齢者の方は少なくありません。
その為、その後の声掛けにも工夫しましょう。
転倒した時の対処法
では実際に転倒したら、どういった対応をしなければいけないのでしょうか。
発見者がすべきこと
まず第一発見者がすべきことを手順を追ってご説明します。
- 安全を確認したら、応援を呼ぶ
横になったままだと危険がある場合は、一旦安全を確保しましょう。
その後ですぐに応援を呼びます。
その協力者に指示を出します。
例えば、看護師等への連絡や吸引機・AEDを持ってくるように依頼します
一人夜勤などですぐに応援が呼べない状況の時は、②以降を実行しましょう。 - 状態を観察
記録に残すためにも、出来る限り状況を正確に観察・記憶又はメモしましょう。
ただし、時間をかけす ぎないようにしましょう。
ポイントは
・転倒している時の姿勢(何臥位か、上肢・下肢はどうなっているかなど)
・出血の有無
・靴を履いているか
・車いすなどの移動器具の状態(位置やブレーキの有無など)
・ベッドや本人などの位置関係
などです。 - 意識があるか、骨折の有無などを確認する
まず本人を起こしたりする前に、意識確認及び骨折などの有無を調べます。
下手に動かすと、状態が悪化する場合があるからです。 - 安全を確認し、本人を起こす
周りの安全(ベッドや椅子など)を確認及び確保し、ゆっくりと脇などを支え、ベッドや椅子に一度座ってもらいます。
※この時、状態によっては下手に起こさないで看護師等の指示をまちましょう。 - 身体状況確認・バイタル測定
痛みの有無、外傷・出血の有無、身体の動きに違和感がないかなどを確認します。その後、バイタル(血圧・体温・酸素飽和度)を計ります。 - 記録
- その後の観察
頭を強く打っている場合は特に注意深く観察が必要です。
急変も考えられる為、その後の連絡や対応に備えておきましょう!
協力者がすべきこと
- まず指示された内容を実行する
- 看護師や相談員、上司に連絡
基本はこの2点を行い、後は様子を見ながら通常業務に戻ります。
急変が起きたからといって、いつまでも1人に付きっ切りというわけにはいきませんので、速やかに通常業務に戻ります。
報連相について
転倒時(急変)に報告・連絡・相談の経路や基準を定めておくと、いざという時に迷わず正確で早急な対応をすることができます。
その為、随時、報連相の仕組みやマニュアルを確認してみましょう!
家族への連絡と説明
これは現場職員向けではありませんが、相談員やそういった立場の方は、速やかに家族へ連絡し、その後の様子も面会時等で家族へお伝えすると親切だと思います。
また、転倒の可能性と対応を事前に家族と話し合っておくと、トラブルを回避できます。
例えば、急変時の心肺蘇生や救急搬送の有無など。
※家族対応の内容を現場職員と共有しておくことも大切です。なぜなら、話の内容にずれが生じないためです。家族と現場職員も話す機会があると思いますので、ここも重要なポイントとなります。
転倒後の分析
転倒に限らずですが、事故を起こした後は、チームで原因の分析・改善策をしっかり話し合い実行していくことが大切です。
ここでは、転倒後の分析ポイントをご紹介致します。
- ご本人は何をしようとしたかったのか(ニーズの把握)
- 靴が滑りにくくないか、履きやすいか
- 証明や補助具などの環境面はどうか
- 本人のADLは最近変化はあったか
- BPSD(周辺症状)などがあったか
などです。
基本的にはまずはニーズを把握し、ADL及びBPSDなどから次の支援を組み立てていきます。
例えば
○トイレへ行きたいくて転倒
⇒トイレまでの距離は適切か、代替支援(ポータブルトイレの使用など)はないか
○暗くて距離感がつめず転倒した
⇒センサーライトの使用、など
転倒予防のポイント
転倒予防のポイントをご紹介いたします。
環境づくり
まずは環境づくりです。
環境づくりで大切なことは、本人のニーズや性格・ADLに合わせることです。
また、認知症のBPSDに合わせて構築することも大切です。
環境づくりの案として、以下の画像をご参照ください。
アセスメント
アセスメントの重要性は語らずもがなですね!
転倒においても、ご利用者のニーズ・ADL・BPSDなどを考慮してアセスメントをしっかりと行い、支援及び環境づくりに活かしていきます。
身に着けているもの
ここでいう身に着けているものとは、靴・服・メガネ等です。
- 靴は適切なサイズか、かかとを踏んでいないか等
- 裾を引きづっていないか、動きやすい服装か等(本人の好みによる)
- メガネの度はあっているか、サイズはフィットしているか等
身に着けているもの、つけ方等によっては転倒のリスクが高まりますので、こちらもきちんと確認しておくことが大切です。
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移動補助具は適切か
- 杖、四点杖
- シルバーカー
- 歩行器
- 車いす
などの形態は適切か、使い方は適切かを今一度確認してみます。
例えば、車いすなら「座面の高さ」「空気圧」「浅座りになっていないか」などを考えてみます。
座面の高さが合わないと、足でこげにくかったりします。また、立位動作の阻害にもなります。
浅座りになっている場合は、そのままずり落ちる危険があります。その場合は、滑り止めマットを座面の上に置いたりして、ずり落ち防止を図ります。
介護テクノロジーの活用
人の力だけでは見守りなどマンパワーが不足しがちです。
それを補う為に、介護テクノロジーの活用を推奨いたします。
例えば、介護テクノロジーには以下のようなものがあります。
見守りセンサー・カメラ
離床・臥床を知らせてくれたり、バイタル変化を知らせてくれます。
また、カメラで様子を観察し、変調にすぐに気づくことができます。
最近の見守りカメラは、プライバシーも配慮した白黒版やぼかしが入っているものもありますので、ぜひ活用していきたいですね。
人感センサー
人が通ると音が鳴るセンサーです。
こちらは、ホームセンサーなどにも売っており、お買い求めしやすい値段となっています。
その為、気軽にセンサーを導入することができます。
所在確認にはもってこいの商品です。
パワーアシストスーツ
介助者が身につけることで、移乗や起こしをアシストしてくれるアイテムです。
こちらは転倒後に、安全にご利用者を支援する際に活用することができます。
こちらはテクノロジーではなく、コルセットのようなものになります↓
まとめ
転倒は高齢者にとって重大なリスクですが、日々の予防策と迅速な対処法を知ることで、そのリスクを大幅に減らすことができます。
日常生活における環境整備や体力の維持、そして転倒後の適切な対応を心がけることで、大切な方の安全と健康を守ることができます。
1番大切なことが、その方の自己実現の機会を守ることです。
転倒して、入院したり、ADLが低下し活動制限が加わらないように配慮して支援していく必要があります!
私も、今まで以上に、環境や支援方法の見直しをしていき、転倒予防に努めてまいります!