『命を守る初動対応と、再発を防ぐために現場ができること~』
「むせた」「ゴホゴホしている」
その一瞬の判断が、命を左右するのが誤嚥です。
高齢者・介護施設・在宅介護の現場では、誤嚥は決して珍しい事故ではありません。
しかし、正しい対処法とその後のリスクマネジメントを理解しているかどうかで、
「一時的なトラブル」で終わるか、「誤嚥性肺炎・死亡事故」につながるかが分かれます。
本記事では、
- 誤嚥とは何か(誤嚥と窒息の違い)
- 誤嚥した直後の正しい対処法
- 絶対にやってはいけないNG対応
- 誤嚥後に起こりやすいリスク
- 施設・在宅での再発防止マネジメント
を、現場目線で分かりやすく解説します。
目次
誤嚥とは?|まず押さえるべき基礎知識
誤嚥の定義
誤嚥(ごえん)とは、
本来は食道に入るはずの「食べ物・飲み物・唾液・胃内容物」が、
誤って気管に入ってしまう状態を指します。
「誤嚥」と「窒息」は違う
よく混同されがちですが、両者は異なります。
| 項目 | 誤嚥 | 窒息 |
|---|---|---|
| 気道 | 一部がふさがる | 完全にふさがる |
| 症状 | むせ・咳が出る | 呼吸ができない |
| 危険性 | 肺炎リスク | 即命の危険 |
👉 咳が出ている=誤嚥
👉 声が出ない・呼吸できない=窒息
この判断が、初動対応で非常に重要です。
誤嚥した時は、一旦摂取をやめ、他職員及び看護師へ相談しよう
誤嚥した直後の正しい対処法【最重要】
① まずは落ち着いて状態を観察する
- 咳が出ているか
- 呼吸ができているか
- 顔色(チアノーゼ)が出ていないか
👉 咳が出ている場合は「無理に飲食を続けない」
② 咳が出ている場合の対応
咳は体の防御反応です。
✔ 上体を少し前傾
✔ 背中をさする、軽く叩く(初期段階では強く叩かない)
✔ 「ゆっくり咳をしていいですよ」と声かけ
❌ 水を飲ませる
❌ 口に手を入れる
❌ 無理に姿勢を変える(特に仰向けには絶対にしない)
③ 咳が止まらない・呼吸が苦しそうな場合
- 酸素飽和度(SpO₂)が測定する
- 痰が絡んでいる場合は吸引を検討(看護師へ相談・依頼)
- 改善しない場合は医師・看護師へ即報告
飲食をしていなくても、日常的にむせ込みや痰がらみが見られている時は、看護師と「定期的な吸引の必要性と頻度等」を話し合って、決めていくことが必要です
④ 窒息が疑われる場合(咳・声が出ない)
👉 迷わず緊急対応
- 背部叩打法
- 腹部突き上げ法(ハイムリック法)※医療・介護職は施設マニュアルに従う
- 119番通報
事前に、緊急(急変)マニュアルを日常的に確認しておきましょう。なければ、早めに作ることをおすすめします。また、現場目線のマニュアルが望ましいです。
絶対にやってはいけないNG対応
誤嚥時によくある危険行為です。
- 「水で流そう」と飲ませる
- 仰向けに寝かせる
- 口の奥に指を突っ込む
- 強く背中を叩き続ける
- 咳を止めようとする
👉 これらは誤嚥を悪化させる原因になります。
誤嚥後に起こりやすいリスク
① 誤嚥性肺炎
誤嚥後、数日~1週間後に発症することも多く、
- 発熱
- 咳・痰の増加
- 元気がない
- 食欲低下
- 呼吸苦
といった症状が現れます。
👉 誤嚥直後に症状がなくても安心しないことが重要
② 気づきにくい誤嚥(サイレントアスピレーション)
- むせない誤嚥
- 本人が気づかない誤嚥
認知症・脳血管疾患・嚥下機能低下がある方は特に注意が必要です。
日常的な観察と、体温や酸素飽和度をこまめに測ることが大切です
誤嚥後のリスクマネジメント【再発防止がカギ】
① 情報共有・記録
- 発生時間
- 食事内容(食事形態)
- 姿勢
- むせの有無
- 普段の嚥下・咀嚼状態
- 対応内容
- その日の体調や覚醒レベルなど
👉 申し送り・記録は必須
普段は普通に召し上がられている方であっても、覚醒状態や体調次第で誤嚥を起こすリスクがあります。そのため、当日の覚醒状態や体調を申し送り、互いに注意喚起することが重要です。
② 食事形態の見直し
- 刻み食が逆に危険な場合もある
- とろみの調整
- ソフト食・ミキサー食の検討
👉 ST(言語聴覚士)との連携が理想
体調や嚥下状態の変化、薬の副作用などにより嚥下状態の低下などを考慮し、早めに食事形態を変更することで守れる命があります。
③ 姿勢・環境調整
- 30~45度以上の座位
- 顎引き姿勢
- 食後30分は臥床しない
④ 口腔ケアの徹底
口腔内の細菌は、
誤嚥性肺炎の最大の原因です。
- 食後の歯磨き
- 義歯管理
- 乾燥対策
⑤ 職員・家族への教育
- 誤嚥時の初動対応
- NG行動の共有
- マニュアル整備・研修実施
👉 「知っている」だけで事故は防げる
嘔吐=誤嚥につながる場合もあります。吐き気や嘔吐があった際は、誤嚥も考慮しましょう。
まとめ|誤嚥は「防げる事故」である
誤嚥は確かに怖い事故です。
しかし、
- 正しい初動対応
- 観察と記録
- その後のリスクマネジメント
この3つが徹底されていれば、
重症化・再発は大きく防ぐことができます。
「たまたま」ではなく
「仕組み」で誤嚥を防ぐ。
それが、介護・医療現場に求められるリスクマネジメントです。
















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