ターミナルケアに携わると、「本人のために何ができるだろう」「ご家族にはどう声をかければよいだろう」と迷うことがあります。
大切なのは、本人がどのように過ごしたいかを確かめ、苦痛を和らげながら、その思いをチームで支えることです。この記事では、介護現場で押さえたい考え方を、ICやエンゼルケアも含めて解説します。
ターミナルケアとは
ターミナルケアとは、人生の最終段階にある人が、できるだけ穏やかに、その人らしく過ごせるよう支えるケアです。痛みや息苦しさなどの身体的なつらさだけでなく、不安や寂しさ、家族との時間にも目を向けます。
介護職にとっては、普段の関わりを続けながら、表情や言葉、生活の変化を丁寧に受け止めることが重要です。「最期が近いから特別なことをする」だけではなく、今の一日をどう過ごしたいかを考える支援といえるでしょう。
厚生労働省は、人生の最終段階における医療・ケアについて、適切な説明を受けた本人の意思決定を基本とし、多職種のチームで方針を決めることを重視しています。
【引用元:厚生労働省「人生会議」してみませんか】
ターミナルケアで大事なこと
本人と家族の意向を確認する
まず確認したいのは、本人が大切にしていることです。「住み慣れた場所にいたい」「家族と過ごしたい」「苦痛をできるだけ減らしたい」など、希望は人によって異なります。
本人が言葉で伝えにくくなった場合は、以前の発言、日頃の習慣、表情や反応を手がかりにします。家族の話も重要ですが、家族の希望をそのまま本人の希望と決めつけず、チームで丁寧に検討します。
また、意向は体調や気持ちの変化によって変わることがあります。一度確認して終わりにせず、繰り返し話し合い、記録して共有することが大切です。
できる範囲で、できるだけのことをする
ターミナルケアでは、すべての希望を実現できるとは限りません。それでも、「今なら何ができるか」を考える余地はあります。
例えば、本人の状態に合わせて次のようなことを検討できます。
- 楽な姿勢や過ごしやすい室温に整える
- 好きな音楽を流すなど、落ち着ける環境をつくる
- 家族と過ごす時間を確保する
- 口の渇きや痛み、息苦しさなどの変化を看護師に伝える
食事や水分をどうするかは、本人の希望に加えて、体調や安全性を踏まえた判断が必要です。介護職だけで判断せず、医師・看護師を含むチームで相談しましょう。
どのような最期を迎えたいかを話し合う
「どこで過ごしたいか」「状態が変わったとき、どのような対応を希望するか」などは、本人が話せるうちから確認しておきたいテーマです。
ただし、話し合いを急がせる必要はありません。本人や家族の受け止め方に合わせて、医療者から病状や選択肢の説明を受けながら進めます。希望する場所で過ごすために必要な支援や、施設で対応できる範囲も具体的に共有しておくと、急変時の迷いを減らせます。
多職種で連携する
介護職が日々気づく「いつもと違う」は、ケア方針を考えるための大切な情報です。
| 職種 | 主な役割の例 |
|---|---|
| 医師 | 病状や見通し、治療・苦痛緩和について説明する |
| 看護師 | 症状を評価し、医療的ケアや介護職への助言を行う |
| 介護職 | 日常の様子、本人の言葉や反応、生活上の希望を伝える |
| 生活相談員・介護支援専門員など | 家族との連絡や支援方針の調整を行う |
役割分担は施設によって異なります。誰に、何を、いつ伝えるかを普段から確認しておきましょう。厚生労働省の看取り介護に関する資料でも、本人・家族への説明と合意、多職種による共同の支援が示されています。
【引用元:厚生労働省「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項」】
介護者も一人で抱え込まない
看取りに関わると、「もっとできたのでは」と感じることがあります。迷いや不安があるときは、一人で結論を出さず、看護師や上司、チームに相談してください。
本人の小さな変化を伝えること、そばで落ち着いて声をかけることも、介護職にできる大切な支援です。看取り後にチームで振り返る機会を持つことは、職員の気持ちの整理にも、次のケアにもつながります。
IC(インフォームド・コンセント)とは
ICとは、ご家族様が医師から医療行為について目的や内容、効果、リスク、ほかの選択肢などの説明を受け、本人が理解したうえで意思を示すことです。
書類に署名をもらうことだけで完了するものではありません。
ターミナルケアでは、病状や今後の見通し、選べる医療・ケアについて、医師などが本人に分かりやすく説明します。介護職は、その後の本人の疑問や気持ちの変化を受け止め、必要に応じて説明を担当する職種につなぎます。
【引用元:国立がん研究センター がん情報サービス「インフォームドコンセント」】
家族の意向を把握し、支える
ご家族も「本人にとって何がよいのか」と悩むことがあります。希望を尋ねるときは、対応の選択だけを迫らず、心配していることや、本人らしさについて知っていることを聴きましょう。
例えば、次のように具体的に確認できます。
- 本人が普段から大切にしていたことは何か
- 面会や連絡について希望はあるか
- 病状の変化について、どのような説明を受けたいか
- 家族として参加したいケアはあるか
本人と家族の意向が異なる場合もあります。その場でどちらか一方に決めず、医師・看護師などと情報を共有し、本人の意思を中心に話し合いを重ねます。
【参考:厚生労働省:人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン】
エンゼルケアとは
エンゼルケアは、亡くなった後に行う整容などのケアです。身体を清潔に整え、着替えや身だしなみを整えることがあります。本人の尊厳を守り、ご家族がお別れの時間を過ごせるよう配慮することが大切です。
この時に、着物を着るのが一般的です。
実施にあたっては、死亡確認後、施設の手順と看護師の指示に従います。ご家族が参加を希望するか、衣服や身だしなみ、宗教・文化上の希望があるかも確認しましょう。死後の処置や家族への支援は、施設における看取りの取り組みでも扱われています。
介護職員は、基本的に医師の死亡診断を待つことになります。その後に看護師と協力してエンゼルケアを行いましょう。
【引用元:厚生労働省「特別養護老人ホームにおける看取りの推進と医療連携」】
まとめ
ターミナルケアで大切なのは、本人が望む過ごし方を中心に、苦痛への対応と日々の生活をチームで支えることです。本人と家族の思いを繰り返し確認し、介護職が気づいた変化を多職種につなぎましょう。
「できること」が小さく感じられる日もあります。その日の本人にとって何が心地よいかを考え、丁寧に関わることが、ターミナルケアの土台になります。






















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